ゲームユーザーから見ての、今のゲームに対する想いを綴ってみます。
かなりの長文になりそうだったので、語りたい部分だけに絞ってまとめています。
■前振り
昔と違い、今はどこを見てもゲームがある。
一家に一台あるPC。誰もが持っているケータイ電話。
プリインストされているもの(既に収録されているもの)もあれば、
ネットにアクセスすれば無料で遊べるゲームの数々。
ゲームはもう嗜好品ではなく、日常的にあるものだ。
現在、爆発的に普及している任天堂DS。
売れたソフトは脳トレなどの、いわゆるカジュアルゲーム。
ケータイ電話でも無料で短時間で遊べるカジュアルゲームが今でも人気だ。
そのプレイヤーは、難度なゲームには手を出さない人たちが多数なのだとわかる。
ファミコンが流行り、スーファミ、PSという、まだまだゲームが嗜好品だと思えた頃を考えれば、
当時なら”ゲームはやらないと思えた層”が、今は手軽にゲームに接しているのだと感じる。
特に女性層。加えて高年齢層。
女性層に関しては、おそらくケータイがそれを牽引したのだろうと思える。
しかし彼らはカジュアルゲームにとどまるだけで、凝ったゲームまでは手をつけない。
理由は、ルールや操作を覚えるのが面倒だからだ。
■任天堂の戦略
カジュアルゲームの大半はアクション。
ケータイではボタンを押していればいいだけという簡単操作だ。
ルールも大して難しくなく、タイミングよく押すといったものが多い。
ファミコンの初期を考えれば、当時はアクションやシューティングばかりだった。
そこへアドベンチャーという読み物+分岐のジャンルが確立していった。
ファミコンでいうならば「ドラクエ」がRPG人気の発端となり、
ファミコンユーザーの中にRPGが浸透していった。
そこからさらに難度なシミュレーションゲームが登場した。
すごく乱暴な説明をすれば、そうした流れでゲームユーザーが育てられていった時代があった。
今のDSはようやくアドベンチャーゲームが浸透してきたところ。
アクション、そしてアドベンチャーというゲームに接しさせながら、
脳トレから入ったユーザーをあたかも成長させているように。
このあたりは任天堂の戦略の上手さに舌を巻く。
しかしまだRPGをプレイするところまでには至っていないのが現状だ。
もちろん古くからのゲームファンもいるが、
DSユーザーの大半はそうしたゲーム慣れしていない者たち。
たくさん売りたいメーカーからすれば、その波に合わせたゲームを出していくほうが
DSでは無難な策だといえる。
■DSでRPGはまだ早い
先日「アルカイックシールドヒート」という、FFリーズを手掛けた坂口博信氏が
ゲームデザインを担当したゲームがDSで発売されたが、ものの見事に惨敗。
発売から一週間で半額投げ売り状態という記事も目にした。
スーファミが流行っていた当時は、坂口氏やスクウェアの名前を出せば
それだけで売れたものだけれども、今の大半のDSユーザーには誰それ?な感覚なのだろう。
むしろ女性層や高年齢層にとって、ゲームデザイナーの名前なんて気にしないと思える。
当時の”メーカー名を見て買う”という流れはそこにはなく、
過去に名を馳せたブランドは、多くのDSユーザーに対しては威力は無いに等しいことが伺える。
「DSではまだRPGが育っていない」
どこで目にしたかは失念したが、この言葉は一理ある。
しかし本当に育つかどうかも怪しいものだ。
ファミコンが歩んできた歴史と同じようにみれば、少しずつRPGも浸透していくだろう。
けれども当時遊んでいたのは根っからのゲーム好き。
今の多くのDSユーザーはそこまでこだわっていないとも思える。
■古参と新規が入り混じった現在のユーザー層
RPGなんて簡単、そう思えるのは古参ユーザーやゲームファンだ。
カジュアルゲームからゲームというものに触れたユーザーにとって、
RPGは難しいとさえ言われているのが現状。
考えてみれば、当時初めて「ドラクエI」をプレイしたとき、なんだこれはと感じたことを思い出す。
アクションゲーム=コンピュータ側の思考に勝つ、ということしか考えられなかった当時は、
”なぜ戦闘の勝敗をコンピューター側に任せるのか”、”勝てるわけないじゃないか”とさえ
思ったこともあった。
感覚的にRPGというものを理解するまでには時間がかかるものだ。
DSで「ドラクエIV」が11/22に発売するが、
RPGファンを育てるならば「I」から発売するべきではないだろうかと思う。
古参ユーザーからは「またドラクエIのリメイクかよ」と言われるだろうが、
「ドラクエIV」はシリーズの中でも異色だと思えるため、
慣れていないユーザーに対しては、余計に難しさを与えてしまうのではないだろうか。
リメイクとは新規ユーザーに向けたものと思う自分としては、
正直、ターゲットを絞るならば古参ユーザーの言葉に耳を傾けなくても良いと思う。
自分も古参ユーザー層だが、気にせずやれと言いたくなる。
メーカーからすれば、”古参と新規が入り混じった現在のユーザー層”は
難しい時代なのだろうなと思えてならない。
■カジュアルから一歩進んだゲームへ
女性層、高年齢層と上記で掲げているが、
実のところ昔からのゲームファンはすでに30歳前後に突入している。
回帰ユーザーも含め、ずっとゲームに接しているユーザーでも、
その年代になると重厚かつ濃厚なゲームは胃もたれを起こすほどに遠慮してしまう。
飽きなのか年なのか。
そう考えると、カジュアルゲームを楽しむ層がかなりの数を占めてくると思える。
カジュアルゲームから新ジャンルが生まれれば爆発的ヒットとなることは、
脳トレなどから推測可能だ。
しかしゲームファンからすれば、それらを面白いと感じるものの、
やはり物足りなさも感じてしまう。すでに脳トレを触らなくなって久しい人も多いはずだ。
カジュアルゲームはあくまでも余暇の楽しみ。そこに思い入れなどはない。
カジュアルとはいえ、それはルールや操作が簡単というだけで、
それなりのやり応えを感じさせてくれるゲームが必要だと思える。
カジュアルゲームで育ったゲームファンをさらに育てるのは、
何もRPGやシミュレーションだけではない。
重厚ゲームに胃もたれを起こしつつある古参ユーザーを含め、
これからは”カジュアルだけれど奥が深い”というゲームが望まれそうな気がしている。
■モンハン3がWiiで出る理由
DSはカジュアルゲームファンが多数を占める。
そしてWiiは家族向けという印象が強い。
そこから考えれば、DS、Wiiともに所持層は20代後半以降と低年齢層。
任天堂ハードに足りない層は10代~20代前半の主に男性、すなわちコアゲームファン。
PSPを所持している層がそれに値する。
そこを「モンスターハンター3(以下、モンハン3)」で取り入れ、
DSへも流すという戦略なのだろう。なかなか考えられた仕組みだ。
PS陣営への明らかなる挑戦が見て取れて面白い。
個人的には「Wiiでしか出しません」というカプコンの言葉は信用していない。
かつて「バイオハザード」シリーズをGC(ゲームキューブ)でしか出さないと言っておきながら
PS側へと普及させたこともあり、これはその場だけの言葉でしかないと思っていいだろう。
今よりもっとPS3が売れていたならば、PS3で発売されていたことは明らか。
一番売れているハードに供給するのはソフト会社の生き残りという使命もあるため、
ある程度は仕方ないと思える。
むしろこうした言葉を鵜呑みにしないよう、ユーザー側がだまされない目を養う必要がある。
「なんでWiiなんだよ」と嘆いている方、一点しか見ないのではなく、
そうしたゲーム業界という大きな流れで視野を広げてみると理由が分かってくるはずだ。
新たにハードを買わなければならないという点からすれば、納得いかない気持ちもわかる。
しかしそれが業界での戦略であり、
ゲーム会社の生き残り=ゲームファンの居場所の確保をも築いていることにもなる。
「モンハン3をWiiで出す」は、一時的な任天堂側との共同作戦。
「3」が他ハードで出なくとも、以後のシリーズが別ハードで出続ける可能性は高いのだから。
■まとめ
ゲームは、もはや一部のファンだけのものではなくなった。
女性も子どももお年寄りも、そのすべてが接することのできる時代。
とはいえその全ての層に気に入られるゲームなんて、そうそう出ることはない。
ならばそれぞれのターゲットに合わせて出すという考えに至るのは当然であり、
メーカー側もそんなことは分かっていると思う。
すでにターゲットを絞ってきているのはDSソフトを見ても明白だ。
古参ユーザーを含めたゲームファンにとって、
なぜそんなソフトを出すのかと言いたくなるタイトルもあるだろうが、
それはコアユーザーと新規ユーザーが入り混じった今の時代では仕方の無いこと。
一昔前とは違う。
またリメイクか、簡単すぎる、なぜそのハードで出すのかと批判的意見も言いたいところだが、
それは自分とは違う層を育てていると考えれば、
ゲーム産業を維持していくという意味でも暖かい目で見守るほうが得策なんじゃないかと感じる。
別な層がいることも意識し、自分が面白いと感じるものを楽しめばいい。
そうした取捨選択ができる時代。
ゲームとはそもそも楽しむためにあるのだから。