奇跡によって時間が戻され、
最悪の瞬間であった”渚の死”が無かったことになる。
果たしてこの展開はアリなのかナシなのか。アウトかセーフか。
渚の死でどれだけ朋也は苦しみ、そして見ているほうも涙したことか。
そこへ”もしも生きていたら”というタブーを持ってくることで、
どん底から一気に幸福感を与える展開。
これはある意味、ずるい手法なのかもしれない。
それこそ忘れ去られるほどタブー化した”生きてました”な展開を
これほど堂々と見せられるとは思わなかった。
そこだけ見れば、ズルイと感じる人もいることだろう。
しかし自分は、こんな幸せな岡崎家が見たかったんだと思う。
渚がいて、汐とともに毎日を送る。
そんな何でもないありふれた姿が、今はとてつもなく幸福に思える。
現実には死んだ人は生き返らないが、生き返ることを望めるのが創作物。
良かった、感動した、と素直に感じられるのであれば、
たとえ死者復活というありがちな展開だろうとアリなんだと思う。
過去、数多の作品で使われてきたこともあってなのか、
死者復活=チープだという認識のもと、
それだけでダメだと評価してしまう方もいるだろう。
”ヒロインが死にました、ほら泣けるでしょ?”といった
安易な見せ方をする作品が、そうした風潮を生んできたこともまた事実。
しかしどんなにタブー視された展開だろうと、
見せ方が良ければそれは素晴らしい物語へと昇華するのだと思う。
これは京アニが上手かった。
”いままで悲しい話を見せてきたけれど、これが見たかったんでしょう?”
と言わんばかりの狙い通りなドンデン返し。
それが待ち望んでいた嬉しい出来事だったからこそ、
ズルさすらもかき消すだけのパワーとなった。
見ている側にも幸福感が訪れ感動できるのであれば、自分はこの手法も支持するね。
とても良い展開だったと思う。
◆物語への推測
ちなみに自分は、これまで描かれてきたすべてを朋也は体験しており、
奇跡によって過去に戻されリスタートした、という解釈をしています。
リスタートによって朋也は以前の記憶をおぼろげに持っている。
しかし新しい記憶によって思い出は日々上書きされていくため、
過去を振り返れば1つの道筋しか思い出せない。
以前の記憶を持っているなら未来が見通せるのかもしれないが、
渚が生きているという新しい日常は、以前とまったく同じ状況を生み出さないため、
すべては幻だったかのように幸せな日々を送っていくのだろうと思う。
リスタート後の汐の死については語られなかったものの、
渚がいてくれることによって何らかの解決がなされ、その後も幸せに暮らしていった。
…そう思いたいですね。