「自分の世界を見つけたんだ」
細田守監督の最新作がついに公開!
今回は泣かせる話になるだろうと期待は低めに持ったものの、
見終わった後のじわじわ感がたまらない。
もう頭の中は3人のことでいっぱいだ。
というわけで感想など。
※以下、極力ネタバレなしで書いているので
見ようか迷っている方は安心して参考にしてみてくださいな。
◆あらすじ
狼の男性と結ばれて2人の子供を授かった人間の「花」。
生まれてきた子は人と狼のハーフであり、どちらにも変化できてしまう。
都会で育てるのは難しい。
そこで自然豊かな山奥の村で暮らすことになる。
◆本編感想
端的に言えば親子の成長記。
これまでの細田作品にしてはインパクトが弱く地味な印象だった。
けれどね、丁寧なんですよ。
狼男との出会いから子供たちが生まれるまでもしっかりと描かれる。
感性の豊かな人ならここでの優しさ空間に涙腺が緩むほど。
この2人、いい恋をしているな~と。
あることがきっかけで母子3人となり、
狼の姿にもなれる子供では都会の風はとても厳しい。
人目を忍ぶように山奥へ引っ越し、自給自足。
そこでは子供たちの他愛のない可愛さ、母親の強さをぐぐっと感じる。
このあたりからの優しさに溢れた演出は、見ていてとても気持ちが良い。
ヤンチャっぷりを多いに見せる姉の「雪」、甘えん坊で大人しい弟の「雨」。
活発な姉は狼であることを好み、打って変わって人間のほうがいいという弟。
この真逆の2人がどのように成長していくのかが趣向の1つ。
女の子と男の子がそれぞれの道を歩み出す姿。
体だけではなくその心の成長っぷりに、見ている者をどんどんスクリーンに引き込んでいく。
人と狼の混血というファンタジー色を取り入れることで、
子供の成長をやや過大に表現することができるのも作品としての強味だ。
人の子の育て方すら初めての「花」の苦悩。
いつも笑顔で元気で優しいこの母親の存在が、とてつもなく大きいことも感じられた。
正直、まだまだこの優しさ溢れる家庭を見続けたくて仕方がなかった。
とはいえ最後の締めはこれで良いと思えたよ。
◆総括
後引き感がハンパない。
雪と雨はその後どう成長するのか。
見終わっても妄想が頭を駆け巡るほど、ジワジワとその魅力が後に残る作品。
インパクトの強い作品は、一旦テンションを高めるが時間とともに冷めていく。
この作品は見終わった後はそれほどでもない。
けれど時間をおいても彼女たちのことを考えてしまうほどに
心に色々な思いを刻んでくれていることに気付かされる。
ストーリーは分り易く、端的に言えばシンプル。
しかし思い描いていた単純な展開でもなかった。
見る前はどうせ泣かせるんでしょ?と思ったものの、
決して力業ではない感激をもたらしてくれる。
ドーンとくる泣かし演出はないけれど、その分じわじわとやられる感じだ。
それが良い。
随所での「優しさ」にやられ、子供たちの成長にもグっとくる。
全体に暖かさを感じる作品。
アクション性は皆無なため10代には勧めない。
ファミリー向けでもなく、一緒に行った子供はきっと退屈すると思う。
逆に大人たちは目を真っ赤にして胸を締め付けられる。
全世代の子を持つ親、既婚未婚問わず、
30代以上の親の気持ちがわかる世代がターゲットになるだろうね。
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