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映画『心が叫びたがってるんだ。』見てきた! 感想(ネタバレあり) [【アニメ】劇場版レビュー]

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「玉子の中には何がある?」

長井龍雪監督率いる『あの花』スタッフのオリジナル作品。
見た目やコンセプトからわりと惹かれる要素があったので
泣かされると分かりながらも観に行ってみた!


◆前振り
『あの花』は当時かなり話題になったけれど、
ノイタミナと茅野愛衣の名を広めた作品というのが私的な印象。
力わざで泣きを誘発させたラストには少々ずるさを感じたところもあって、
周囲が騒ぎ立てるほど私的な評価は高くない。
とはいえ作品の空気感は好きで、
透明感のある青春劇を生み出せる長井監督の新作、
それだけで興味は引かれるレベル。
水瀬いのり、雨宮天のキャスティングも大きく背中を押した。

 

◆感想 (注:ネタバレあり)
父親の不倫現場を目撃したことで両親が離婚。
その原因を子供のせいにする両親によって、口を閉ざしてしまうことになる。
小学生時代の成瀬順は明るく元気でとても可愛らしかったのに、
まさかの始まり方だ。

言葉を失くした理由にメルヘンさがまるでなし!w
さすが岡田脚本、ドロドロしてるぜ...
冒頭5分の無料視聴とか最近では珍しくない広報をなぜしないのかと思ったけれど
のっけからラブホが出てきては無理だよなーと独り納得した瞬間。
加えて両親の離婚、その原因を子供に押し付ける親、...重すぎでしょ。
そもそも順が特別におしゃべりという印象はなく、小学生なら当たり前って感じ。
この一件がなければ親に隠し事もせずすくすく明るい子のまま育ったかもしれないのに。
とはいえ明るいうちから目立つラブホを利用する父親なら
近いうちに明るみになっていただろうし、順は運悪く遭遇してしまった感がある。
ちなみに玉子の妖精の体の端に点(、)が浮いており、
それを手で覆い隠すと王子になる演出があったので、
文字で表すと「卵」よりも「玉子」のほうが良いのかな。

高校生になった順はしゃべらない子としてクラスでも定着。
担任から強制的に「地域ふれあい交流会」なる催し物の実行委員として
4人選抜される内の1人にされてしまう。
当然ながら順は拒否の姿勢。
しゃべることができないから実行委員なんてやれるわけがない。
でも問題はしゃべると腹痛に襲われるという玉子の呪いであって、
心まで閉ざしてはいないため、やれるならやりたそうでもあるんだよね。

意思をはっきりさせない坂上拓実。
優等生でチアリーダーの仁藤菜月(cv雨宮天)。
肘を壊した野球部の元エース田崎大樹。
ここで印象を残すのが田崎大樹。体が大きく態度もデカい。
言うなれば絡みたくない相手であり、すぐ暴力振るいそうなイメージがある。
なんとも癖のありそうな4人を選ぶ担任もなかなかに意地悪いが、
生徒に接するフランクな姿は好印象。
こういう先生は何気に勘が鋭かったりするんだよなあ。

携帯を使って坂上拓実と会話を成立させる順。
歌なら声が出せるんじゃないかと提案されて自宅で実践してみれば、
まるで痛みがないことに気づかされる。
こうした流れで催し物はミュージカルに決まるが、クラス中は乗り気なし。
けれど衣装に絵にDTMにと各自興味がある部分が明らかになり、
自由にできるならと、ようやく話がまとまる。
だが田崎大樹だけは「言葉もしゃべれないやつが実行委員かよ」と好戦的に煽ってくる。
そんな中、野球部員による田崎大樹への不満を耳にしていた坂上拓実が
及び腰ながらもそのことをネタに食って掛かる。
腕壊して使えないくせに偉そうに指示してくるのが嫌だというグチだ。
それを知ってしまった田崎大樹は動揺を隠せない。
よく言ってくれたぜ坂上拓実!な場面。
けれど田崎大樹が実行委員として一緒に活動する展開は想像しづらく、
はっきりいって邪魔だなーというのがこの時点での視聴サイドの気持ち。

クラスの空気が悪くなったところで
歌なら声が出せることをアピールするように突然唄い出す順。
これによってクラス全員の順に対する見方が変わった様子。
この歌をDTM(音声合成ソフト)で再現するクラスメイトも現れる。
余談ながらここで使われたDTMソフトは「CeVIO Creative Studio」のさとうささら。
実はその音声元は水瀬いのりである(9/5のあの花ラジオで唐突に暴露)。
順の声を再現するのにこれほど適したソフトはないね。

結果的に田崎大樹は直に部員からの不満を聞いてしまうことになり、
時間があるなら参加してみればという仁藤菜月の言葉もあって
実行委員として共に行動することに。
二人の会話から、中学時代に仁藤菜月と坂上拓実が付き合っていたことが判明する。
ただし手すら握っていない関係で自然消滅な状態だが、
仁藤菜月のほうはまだ未練があるらしい雰囲気だ。
てっきり双方が片思いかと思いきや過去にそういう関係があったとは、
このあたりの設定も岡田脚本らしさだなあと。

ミュージカルの題材は順のオリジナルストーリー。
自分の置かれた状況を形にした、声が出なくなってしまった主人公の物語。
そこに曲をつけるため坂上拓実がピアノ演奏を披露。
うっちーファンには悪いけれどあんまし歌上手くない...
それはさておき、走り出した催し物の準備にクラスが一丸となっていく姿は
学園祭のようでもあって、わくわくする雰囲気が漂っている。
学園祭にしてしまうと学校全体を描く必要も出てきて焦点がぶれるし、
そもそも学校行事のネタとしてありがちさが出てきてしまう。
1クラスだけに絞って何か1つのことに全力で進んでいく姿を見せるのに
地域の催し物というのは良い設定だと思えたよ。

ミュージカルでは主役の少女役に順、王子役に坂上拓実。
これまで自分を支えてきてくれた坂上拓実にほのかな恋心を抱いていた順だったが、
開催日前日に拓実の気持ちを知ってしまい絶望の淵へ。
そこへ玉子が再び現れ、歌なら声を発することが許されると思っていたのかと言われ
さらなる呪いを受けることに。
これにより心まで閉ざしてしまったのだろう、開催日に姿をくらましてしまった順。
ミュージカルは少女役を仁藤菜月に切り替えてスタートしてしまう。
私的には水瀬いのりの歌声が聞けるかと思っていたけれど、ほぼ雨宮天の独壇場だ。
舞台はそのまま半分も終えてしまう始末。とはいえ天ボイスの歌もいいね。

朽ち果てたラブホで順を見つける坂上拓実。
完全に闇堕ちした順の様子に、こんなの説得は無理だろ?と思える状態だ。
そこで拓実は言いたいことを全部しゃべってみろと促す。
順は関を切ったように拓実や大樹を罵り、菜月に対してもいい子ちゃんだと吐露。
確かに各キャラの嫌な面だろうけれど、
視聴者側としてはキャラ性だからと流せる部分だ。
そもそもとても俗っぽくて、それが順の”しゃべりたかったこと”なのか?と疑念が沸く。
世の中みんなそうした不満を言わずに我慢しているわけで...

最後に拓実へ告白することで、ひとまず順の”しゃべりたかったこと”は完遂する。
けれど拓実からあっさり断られるあたりがなんともはや。
拓実が菜月を好きだという言葉を隠さず言って欲しかったようなので、
順がそれですっきりするのならと半ば強引に納得させられた感じだ。
また、呪いをかけた玉子。
それは自身が作った空想の精霊であり、自分で自分を殻に閉じ込めていたことが判明する。
よってここでの一幕で呪いからも開放されることになる。
結果良しといったところか。

舞台はすでに終盤。
順は「少女の心の声」という設定に変えて登壇することに。
菜月と順のダブル主役でミュージカルが進行する展開は、なかなかの見ごたえだ。
ここは水瀬いのり&雨宮天のデュエットも堪能できるシーン。
非常に良い。たまらない。

結果的に清々しくラストを迎えるが、
田崎大樹が順に告白すると言い出したときはおいやめろと思ったよ。
まあ最初は懸念材料だった田崎大樹が、
最終的にはすごくいいやつという印象に変わっていたので
それもまた良いのかもしれないけれど。順には断ってほしいなあw



◆総括
2時間というこの手のアニメ映画にしては長い上映時間。
ひとりの少女の変換期となる青春の一幕がぎゅっと詰まった濃厚な時間であり、
これ以上長くても短くても半端になるちょうど良い長さだったと思える。
しゃべれないからこそ表情や動作で表したという順の動きは
とても愛らしく写り、見ていて飽きなかった。
また、それを演じた水瀬いのりの演技力の高さは必見。
”発声を禁じられた者の発声”というものを見事に演じていたなと。

泣けるかどうかについて。
私的には号泣するまでは至らなかったが、感激できるシーンはいくつかあった。
観終わったあと同行者と語ってみたが、人によって泣きポイントが異なる作品だなと。
それだけ泣きポイントが点在する作品なので、急所を突かれる人もいると思う。
そういう作品だなと。





無料でもらえる劇中ミュージカルのパンフレット。
劇の内容をここで明確に知ることができるってのもあるけど、
順の想像力の高さが窺えて結構引き込まれる。



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