◆序盤からクオリティの高さを見せつけてくる京アニ
プロローグからモブキャラにも手を抜かずにほんと良く動かしてきます。
こういうところのこだわりが凄いですね。
OP曲は懐かしき「冒険でしょでしょ?」。その背景では、部室で電気ストーブの暖を取り合うハルヒとキョン。
お尻をぶつけ合うシーン、良かったです。
と言うか、羨ましい…!
さらに周囲でハルヒが躍っていて、これだけ単品で見たいかも。
あれはラジオ体操?
「SOS団クリスマスパーティ」ホワイトボードに書く際、ちゃんとボードが揺れるんですよ。細かいな~。
SOS団女性陣の足下ハルヒはニーソ、長門はハイソ、みくるちゃんはパンスト。
なにそのこだわりは! 思わずそそられました。
太ももの描きがまた良いんですよね~。
「こら、キョン! 覗くなっ!」みくるちゃんのサンタコス。
不慮の事故によってそれをローアングルから見ることになるキョン。
原作では見たことになっているので、劇場版で解禁かと期待したんですけど…
こだわりのアングルが良かったです。
「どうしてお前がここにいる」朝倉涼子、登場シーン。
PVで観ていたとはいえ、ゆっくりと近寄る演出に吸い寄せられました。
何か異常事態が発生していることが分かり、
それが朝倉さんだっただけに怖さを感じられる瞬間です。
◆表情の柔らかくなった長門がカワイイ!
「ごめんなさい」普通の女子高生になった長門キター!
パっと見の表情からして、もう柔らかい。
これまでの淡泊で無表情さとのギャップにワクワクしますね。
そこにいるのは読書好きな大人しい女の子。
怯える姿、困惑の顔、視線を何度も向けて気に掛ける様子。
ある程度は想定内だったものの、
恥ずかしそうに入部届を差し出す表情にやられた!
萌え死にするとはこのことだろうか。
「帰るよ」長門の部屋から帰る際、すっと袖をつままれる。
この長門がまたカワイイー!!
さらにご飯食べたあとでの帰り際、微笑んだ顔のたまらないこと。
いわゆる”笑えばいいと思うよ”的なアレか。
キョンでなくとも目眩がする。
◆失って分かるSOS団のありがたさ
「俺はハルヒに会いたかった」いつも口ではその行動を否定しつつも、キョンの中でハルヒはすでに大きな存在。
妙なことに付き合わされ、事件に巻き込まれ、食事代を払わされ…
ハルヒに引っかき回される日々とはいえ、
だからこそその存在は大きくキョンを捉えていた。
ハルヒがいないうえに、仲良くしていた人たちとの接点がなくなってしまった世界。
これは辛い。
◆嬉し涙をそそるシーンの連続
「ひょっとして涼宮ハルヒのことか?」開始から1時間ぐらいでしょうか。
じっくりとキョンの置かれた状況を見せ、
寂しさ、苦悩を視聴者に伝えきったあたりですよ。
元の世界に戻る手立てが見えない状況の中、谷口のこのセリフから状況が一変。
ハルヒを知っている者が見つかったこの瞬間、キョンならずとも嬉しくなる。よくぞ言ってくれた、谷口!って。
むしろここまでがプロローグだったとさえ思えてくる。
「だって、そっちのほうが断然面白いじゃない!」ようやく見つけたハルヒは、入学当時の仏頂面のまま。
自分のことを知らないこのハルヒに状況を説明したところで
果たして信じてくれるかどうか。
しかしそこはやっぱりハルヒだなと、気持ちの良いセリフが飛び出してくる。こちらのハルヒは退屈な日々を過ごしていたのでしょうね。
まるでSOS団結成時のように明るい笑顔を見せ、
無茶なことも平然とやってのける行動力。
いつもなら「やれやれ」なところも、今はこんなにも頼りになるとは。
「このまったく同じ反応に俺まで泣きそうになる。懐かしいぜ」SOS団全員が再び部室に集う。
この世界では、今の今まで接点のなかった者たちなのに、
団長が動いたことで瞬時にそろった5人。
見慣れているのに、いつもの光景に思わず笑みが浮かんできましたよ。YUKI.N>PCに浮かぶ長門からの反応。
正解を見つけたことの喜びもありますが、
長門が応えてくれているかのような安心感に歓喜。
この文字が現われただけでテンション上がります!
◆長門に芽生えた感情、それは恋心ではないか
事の始まりは長門によって起こされたことが発覚。
ハルヒの監視に疲れてなのか、ごく普通の世界に作り変えられてしまった。
それを本人はバグやエラーと言ってはいますが、
変貌した世界の長門は、長門自身が求めた自分の姿だったんじゃないかな。笑顔も感情も表に出せる普通の女子高生。
その世界にこそ自分が普通の人としていられる場所なんだと確信して
そのような行動を起こさせてしまったんだと思えます。
キョンだけが変わらなかったのは、そこに恋愛感情が芽生えたから。
心の中にポッと生まれた小さな灯火は、長門にはとても偉大なる変化。
それは本人にも抗えない自然に生み出された恋心なんだと思う。見た目は1人の女の子なのに、
芽生えた感情に自分自身で気付けない存在なのは悲しいよね。
…実際のところ恋心かはわかりませんが。
◆長門かハルヒか
入部届けか栞か…
この世界も捨てたもんじゃないと入部届けにサインしていれば元には戻れなかった。
しかし選んだのは栞のほう。
これは長門かハルヒかのどちらを選ぶかにも直結するのだろうね。
戻るか戻らないかの選択権ではなく、どちらを取るかの選択。しかしキョンの行動は明確で、意識していなくても既に答えが出ていたんだなと。
◆ラストがしっとりし過ぎかな
エンディング曲、茅原実里さんが歌う「優しい忘却」。
長門有希の気持ちになって歌ったという曲。
ただ、アカペラなのでしっとりなんですよね。
また、スタッフロール後に長門の姿が映し出されるのですが、
それもなんだかあっさりと終わってしまう。
確かに終盤は長門の恋心を匂わせるため切ないストーリーとして結末を迎えますが、
それよりも元の世界に戻れた嬉しさのほうが上なんですよ。よって、おおー!と勢い良く叫びたくなるような終わり方にしてほしかったです。
場内では見終わったあと沈黙が続きました。
そうではなく、拍手を起こさせるぐらい楽しげに終わらせたほうが良かったんじゃないかなと。
なんだろ、
喜びたいのに「切ない物語でしょ?」という無言の圧力に押さえ付けられて、
どうにも不完全燃焼。
ラストの演出が勿体無かったと思います。
<総括>
上映時間は約163分と長く、どうしても間延びするようなシーンがありました。
もっとスピーディな展開でも良かったのでは?と思えますね。おそらく京アニのこだわりなんでしょう。
1つ1つの動きを丁寧に見せることで、
どうだい、このクオリティ!というアピールもあったのだと思います。
また、キョンの置かれた状況をじっくり見せ、
その苦悩を伝えるための時間を必要としたのだとも思います。谷口のハルヒ発言の瞬間からスピードアップし、
どんどんキョンの状況が好転していくので見ていて気持ち良くなりましたからね。
それこそ身震いし、嬉し涙もそそられてしまう展開。
そうなることを予測した作りだったと思えば、前半のゆったりさも理解できます。
もし前半が短かったらその気持ちよさが得られなかったかもしれませんし。
とはいえ、もう少しシェイプアップはできたんじゃないかなとも思えるんですよね。上映時間の長さだけが気になりますが、見た目と動きは素晴らしいです。
また原作がそもそも良作なこともあって、ストーリーの面白さは保証できますよ。
【関連記事】→劇場版 涼宮ハルヒの消失 感想&レビュー ネタバレなしver.