借りぐらしのアリエッティ (The Borrower Arrietty) 見てきた！感想 【ネタバレあり レビュー】

角砂糖１つ求めるだけでも大冒険
ジブリの最新作映画、「借りぐらしのアリエッティ」のレビューです。

※注意：ネタバレありです!!
まだ観ていない方、ネタバレを見たくない方は
ネタバレ無しの感想も用意しています。
→借りぐらしのアリエッティ　見てきた！感想 【ネタバレなし レビュー】




↓ネタバレありはこちらから

◆アリエッティが可愛かった
もうすぐ14歳になる彼女は好奇心旺盛でアクティブ。
ジブリ作品では恒例の性格です。
女の子らしい性格や仕草、
トレードマークの小さなクリップを使った髪留めでポニーテールにした姿は
思いのほか可愛かったです。
ティッシュや葉っぱの向こうで影だけで表現される動きにも
アリエッティの可愛さが感じられました。

言葉少なくも優しく頼り甲斐のある父、明るくコメディ色のある母、
小人たちのキャラがとても良く描かれていたと思います。







◆小人視点が面白い
アリエッティは父に連れられて初めての「借り」。
（おそらく「狩り」と「借り」をかけている表現だと思う）

人間の住まいから食料や生活雑貨を調達するための行動。
しかし小人にとっては大冒険。
この視点がこの作品の一番の見どころだったと思います。



・水の表現に注目
水の分子の大きさは変わらないため、ポットから注ぐお茶も水滴として固まりで出てくる。
この表現には感心しました。
上手く小人の世界を水を用いて表現しているわけです。

また、小麦粉を得るために大きなクッキーを砕くといった、
人間の使う物を小人が見たらどのぐらいの比率になるのかという見せ方が面白く、
画面内をくまなく観察したくなります。



・音の響き方にもこだわりが
たとえば雨が石に当たる音。
人間の場合は身長分だけ地面から耳が離れているので、あまり気にはなりません。
しかし小人の場合は目の前に水滴が飛んでくるため、聞こえる音もやや異なる。
小人が聞いているであろう聞こえ方になっているんです。
この作品は色々な部分で音へのこのこだわりが感じられました。



・小人が見る人間の生活空間
初めて見る人間の生活空間は、まるで宝の眠る巨大なダンジョン。
子供の頃に、学校や家の中を「ここはダンジョンなんだ」と
勝手に脳内変換して遊んだことがあるけれど、その感覚を思い出しました。
人間には見つかってはいけないルール。
小人たちにしてみれば、山道を進み、財宝の眠る魔物の城に乗り込むかのような感じだなと。







◆展開が単調
「アリエッティ」は宮崎駿作品ではなく、監督は米林宏昌。
宮崎駿作品と比べれば凄くわかりやすくシンプルなストーリー。
社会への啓示や問題提議などは特に含んでいないため、気軽に見られる良さがあります。

しかし逆にそれが単調であり、先が読めてしまうデメリットが浮き彫りになっています。
一応は事件が起こるものの「こうなるんじゃないの？」という予測がそのまま的中する。
単に自分が深読みする作品が好きなだけかもしれませんが、
子供でもちょっと飽きるんじゃないかなと思えたんですよね。



・目的がない
主人公が何を目的として、何が達成されれば終わりなのか、
そうした明確な目標がないのが一番のネックです。
主観ですが、それって作品としてダメなんじゃないかと思えるんです。
悪者討伐、恋愛成就、世界平和、
どの作品にも明確に主人公の目標が提示されてこそ物語になるんです。
それがストーリー制作の基本だと。

そう考えると、引っ越しをすることになったこれからが本当の始まり。
今回は序章でこれからが本当の冒険だ！で終わる感じに見えました。



・世界観が狭い
小人視点の世界なので仕方のないことですが、
屋敷内でしか移動が行なわれないので、どうにも大冒険をした感じが得られない。
いくら様々な風景を見せていても、やっぱりそこは敷地内なんです。
せめてストーリーが壮大ならば見え方も違ったかもしれませんが、
見終わったあとに「映画を見た！」という開放感が得られ難いなと。







◆声優について
自分は役者が声優をやるのは止めて欲しいと思っていますが、
志田未来に限っては良かったです。
お気に入りの女優さんなので多少のひいき目もありますが、声優として上手かった。
卓越しているわけではないですが、及第点を超えた演技。
その場の動作や感情に、ちゃんと合った演技なんですよね。
なのでアリエッティが自然に受け入れられます。
さすがは志田未来といったところ。

人間の少年だけが棒かな。
他の方々はわりと役にハマっていました。







◆総評
見た目の美しさ、柔らかなアニメーションはさすがはジブリアニメ、安心して堪能できます。
しかしそれは背景や動画スタッフのレベルが高いからであって、
そこはもうジブリのクオリティとして確立されているレベルだと。

あの「ゲド戦記」でさえ、見た目のクオリティは誇って良いレベル。
しかしストーリーは最低レベルでしたけどね。
すなわち、ジブリ作品では誰が監督だろうと
見た目のクオリティはある程度は保証されているものだと思えます。

今作、「絵は良かったけれどお話はいまひとつだった」では、
監督の手腕が問われるのではないでしょうか。
初監督ということで、分かりやすいものを作ったのでしょうけれど、
脚本は宮崎駿作品には遠く及ばないと感じました。

小人といっても人間を小さくしただけなんですよね。
言葉もしゃべるし、人間と同じ思考能力を持っている。
ただ周りがミクロな世界になっただけ。
なので小人社会に興味が沸かない。そこも作品の薄さへと通じます。
何か人間とは違う能力や趣向を持たせていたら、
もっと種族に厚みが出てストーリーも膨らんだのではないかと思えます。

ちょっと言葉がきついですが、高レベルのジブリスタッフを使って、
女の子を可愛く描きたかっただけの作品にしか見えなかったですね。
その甲斐あってアリエッティは可愛いく描けています。
キャラクターの魅力は高いんですけどねぇ。







◆評価
物語　　　　 ・・・2
キャラクター・・・4
映像　　　　 ・・・5
演出　　　　 ・・・4
音楽　　　　 ・・・4






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