ここへきた大事な目的。それは彼女との約束。……我に返る。


 今日の日付と10年前の日付は同じ、すなわち"ちょうど10年後"だ。時刻もほぼ同じ。

……だが、約束とはいえ、あれ以来連絡をとったことがない。考えてみれば彼女の住所や電話番号も知らない。加えて名字もわからない。知っているのは美佳という名前だけ。
 人に話せばきっと笑われるだろう。10年前の約束をギリギリで思い出したがために、勢いに任せてここまで来てしまった、こんなバカバカしい衝動的な行動。

当然、彼女が現われるとは限らない。いや、すでに忘れてしまっている確率の方が高いのではないだろうか? 自分もそうだったように……。

たかが7歳の小さな約束。そんなもの、真面目に覚えているほうがおかしいのではないだろうか。
 あまりにも簡単に答えが出てしまった。

バカだな……俺。