映画の内容は、ギンコの少年期が描かれた
第12話「眇の魚」(すがめのうお)が
全体の軸としてあります。
ギンコがギンコになった所以を語る話ですね。
白髪で隻眼の女性”ぬい”との出会いから”ギンコ”になるまでの話。
※画像はアニメ版です(以下同)
そこに、
第3話「柔らかい角」が前半の物語として描かれ、
後半は、
第7話「雨がくる虹が立つ」と
第20話「筆の海」を合わせた形になっていました。
ラストはオリジナルで、”ぬい”との話に終止符を打ちます。
まず観た率直な印象として、長い!
作品の性質上、どうしてもゆったりとした表現になるため、2時間半は長過ぎると感じます。
また、個人的には無駄な映像が多かったと思います。
”蟲師”としてではなく、”映画”として、そのシーンはもっと短くしても良いんじゃないか、
そこはいらないんじゃないかと思った部分が何箇所かありました。
細かいところへのツッコミとして、
序盤の「柔らかい角」の中で失聴した村人たちを治療し、
薬を売るシーンがあります。
その行為が、何だか
ギンコが商売人のようなイメージです。
序盤なので、初見の人には”薬を売り歩いている人なんだ”と
思われてしまわないかと思ってみたり。
原作と違うところでは、
後半部の「雨がくる虹が立つ」と「筆の海」の合体。
虹を探す男”虹郎”との旅の間、「筆の海」も同時に語られるというだけですが、
ギンコが巻物から溢れた文字に襲われ、文字に取り憑かれてしまい意識不明に。
ギンコを助けるために”淡幽”と”たま”とともに虹郎も奮闘します。
ただ、原作と違うとはいえ、ここは特にイメージが壊れるものではありませんでした。
その後、一命は取りとめたもののギンコは夢遊病者のような感じに。
それでも虹郎と旅を続けるのですが、途中でいきなり快復したところに違和感があったかな。
一番気になったのは、
ギンコがタバコを吸う点について。
これが普通のタバコではなく、蟲煙草と呼ばれる、煙で蟲を寄せ付けない要素があるのと、
蟲を引き付けてしまうために吸っているという解釈が語られない点。
初見の方にはこれが伝わらないと感じました。
また、蟲を引き寄せてしまうがために一箇所にとどまれないという理由のために、
旅をしているという点も分かり辛いと感じました。
それと、
”蟲に取り憑かれた人を助ける”というシーンが少ないため、
蟲師の基本的な職種が十分に伝わらないだろうなとも感じました。
こうした点から、原作ファンからは駄作というレッテルを貼られてしまったのだと思います。
独特の世界観だからこそ、こだわりのあるファンが多い作品。そうしたファンからすればダメ出しがあるのも分かる気がします。
ただ、どんな作品であれ原作ファンというのは、概ね実写化はダメという烙印を
押してしまう傾向にあるため、やはり自分の目で見て判断するのが良いかと思います。
自分としてはそれほど酷い内容ではないというのが結論です。
ラストは疑問が残りますけれどね。
”ぬい”役の江角マキコの演技はさすが上手いなと感じました。
また、原作ではお堅いイメージの
淡幽ですが、
蒼井優の見た目の可愛さが前に出ていて、むしろ良し! でした。
個人的に、
淡幽が菜箸を使って文字を捕まえるシーン。
これが実写で再現されていて格好良かったです!
捕まえた文字をスパっと巻物に貼り付けていく姿はシビレました。
ただ、1回しか見せてもらえず、もう1回ぐらい文字の貼り付きシーンが見たかったですね。
とはいえこのシーンは震えました。盛り上がる部分です。
むしろこれを見ることができて良かったと思ったぐらい。
ここで終わっておけば良かったものの、この先からが長く感じられました。
次の盛り上がりは、虹郎と一緒に虹蛇を見つけるシーン。
綺麗な虹がスクリーンいっぱいに描かれたのは壮大でした。
もうここで終わりだろうと思いきや、原作にはない、”ぬい”との話の決着へ。
これがおそらくダメだった部分。
ラストをどうするのか迷った挙句に仕方なく入れた話のような気がしました。
最後も良く分からないままだったですし。収拾つかなかったのかな?
最後がよければもう少し酷評が減ったかもしれませんね。
余談ですが、ギンコが文字に襲われるシーンで、「どうする!?」と言うのですが、
ここでライフカードが浮かんだのは自分だけではないはず(笑