第三期のラスト、そして作品としても完結する最終回。
これまで何度か感想を書いてきたものの、今回は名言の嵐。
考えさせられ、グっとくる言葉がいっぱいでした。
前回、アリシアさんの「大切なお話があります」で終わったあと、
一体なにがあったのか…。
怒濤の最終回はなごやかな食事風景から始まった。
モグモグと食事を摂る灯里を、熱いまなざしで見つめるアリシア。
「な、なんでしょう…?」
そのあまりの見つめっぷりに、赤らめながら顔を隠す灯里。
そりゃ~、アリシアさんの女神のような微笑みに見つめられちゃ~ねぇ。
「ちょっと嬉しいだけよ」
なんだろう? 何か嬉しいことでもあったのだろうか?
一体あのあと、どんな話が交わされたのか…
このときは、そんな安易な気持ちでこの2人のやり取りを見ていました。
まさかこのフリがねぇ…。
「聞いたわよ!」
やはり灯里のプリマ昇格に、喜び勇んでかけつけたってところか。
ここはほら、3人でわ~っと喜び合うところですね!
……あれ? なんか空気違うな。
「アリシアさんがウンディーネを寿引退するってホント!?」
………はい?
俺もたぶんアリスと同じ顔してたよ。
このやっつけ具合いの良いアリスの表情がたまらん。
いやいや、違う。
そーでなくて、えーと、アリシアさんが……引退!?
しかも寿ってことは、結婚ですか!?
待て待て待て……一瞬の出来事で整理がつかない。
その後にゆっくりと語られるアリシアさん引退の話。
ゴンドラ協会の常務理事、
要するに今よりもっと広い範囲でウンディーネを育てる高い地位に就くのと、
結婚のこともあって、灯里がプリマになるまで引退を先延ばししていたという。
さすがは三大妖精と呼ばれるだけの人気者。
引退の話が広まるのが早いのか、みな一様に祝福。
アリアカンパニーは、アリシアと灯里の2人きりの会社。
アリシアのことを饒舌に語る灯里を
心配そうに見つめる藍華とアリスを見ていると、
3人の仲の良さが伝わってきます。
2人から心配する言葉に大丈夫だと返す灯里。
「きっと大丈夫」
この復唱は、灯里が自分自身を勇気づけるために言ったものでしょう。
そう思うと、少し切ない。
本当はアリシアさんがいなくなることに対して、
思いっきり涙を浮かべて否定したいのだと思う。
けれどアリシアさんの引退は、
彼女の昇進と人生の門出となることが分かっているため、
そんな駄々をこねていては足を引っ張ってしまうということも重々分かっている。
だからこそグっとこらえて笑顔を見せる。
灯里はそういう娘なんだよね。
引退までの引き継ぎ期間。
それはこれまでと同じようにアリシアさんと過ごせる時間。
「当たり前のように流れていく幸せな日々」
そう、それまでは変わらぬ日々でも、いずれは変化がやってくるもの。
変化が起きたとき、人はそれまでの平凡な時間がどれだけ幸せだったのか
改めて認識することになるものです。
「アリシアさん、この書類なんですけど……」
振り向いた先に、その影はない。
1人ぼっちになると、こんなにも部屋の雰囲気が変わるものなのかと
痛感した瞬間だったのかもしれない。
いつもいた人、これまであった暖かなまなざし。
自分を支えてくれた人がいなくなることを、
このとき灯里の心にズンと響いたのだろう。
少し外に出ていただけだったアリシア。
戻ってきた彼女が見た灯里の目には、大粒の涙が光っていた…。
「みんなアリシアさんに引退してほしくないんですよ」
止まらぬ涙を手でぬぐいながら、引退を悲しむ灯里。
「みんな本当にアリシアさんのことが好きなんですから」
そう言って、世間の人たちからどれだけ愛されているかを語る灯里だけれど、
本当は、”みんな”の部分を”私は”で語りたかったんじゃないだろうか。
これまで耐えてきた本音が、ここで堰を切ったようにあふれ出てくる様子は、
アリシアを心配させまいとする抑制が働きつつも、
自身の気持ちをぶつけているかのようだった。
それがアリシアにも伝わったのか、灯里に走り寄って抱きとめる。
「本当はもう随分前から、
灯里ちゃんにはプリマになれるだけの実力が備わっていた」
所々で見せていた灯里の実力。
操舵だけでなく、案内の素敵さも十分伝わってきていた。
トラゲットで見せた技術が決定的。
そんな灯里の実力を、アリシアさんが見逃すわけがない。
「でも、灯里ちゃんと一緒にいられるこの愛おしい時間を失うのが怖くて…」
ああ、アリシアさんも灯里と同じ想いだったんだな。
すべて自分のわがままだったと告白するアリシア。
三大妖精の1人にここまで言わせる灯里って、どれだけ凄い存在なのか。
「一緒に歩いているときは、みんな同じ道を歩いているように感じていたけれど
本当はみんなそれぞれ違う、自分だけの道を歩いているんですよね」
…深い。
聞いてしまえば、うんそうだよ、ってなるけれど、
これが分かるのは、ある程度の経験が必要なんじゃないかと思う。
これまではプリマという目標を目指して、一緒に歩んでいた仲間たち。
けれども本当の道は、プリマになったその後に開かれるもの。
昇格してどんどん自分の道を進んでいく藍華やアリスを目の前にして
自分の進む道はなんだろうと考え始めたんじゃないだろうか。
「私、この道の先に待っている、みんなの素敵な未来に出会いたいです」
このセリフには感銘した。
友達やみんながどんな風にそれぞれの道を歩んだのか、
それを見てみたいという気持ちは普通に持っていることだと思う。
しかしそれが素敵なものであることを望みたいというところが素晴らしいです。
現実の競争社会で、これを素直に言える人なんて
なかなかいないんじゃないだろうか。
プリマになった灯里の今日のお客さんは、郵便屋のおじさん。
「嬢ちゃんにはこの街が付いとる」
このとき、この言葉の意味がわからなかったけれど、
郵便屋の紹介で予約が入ったり、そのほか色々な人の紹介で
予約が入ったことを話す灯里を見ていると、納得できてくる。
街の人みんなが灯里を応援している。
この横の繋がりの大きさ。
もちろん灯里の性格があってのことだけれど、
これまで様々な人とつながってきたことは決して無駄ではなく、
困っているときは街にいる人々すべてが助けになるほど、
灯里という存在がすでにアクアで大きくなっているんじゃないかと。
アリシアさんの引退セレモニー。
カンパニーを後にするアリシアさんのまなざしに、
”いままでありがとう”といった言葉が聞こえたようだった。
盛大なるセレモニー。
灯里に手渡された舵は、次世代へのプリマへ
ウンディーネの未来を託す舵が引き継がれたようにも感じた。
セレモニーから何日経ったのか、その後のみんなの動向。
たまに遊びに来てくれるというグランマとアリシア。
アリシアの灯里を見るその微笑みが、本当に嬉しそうというか
灯里の成長を心から喜ぶ笑顔だと思えました。
「幸せに包まれたたくさんの始まりの風、
アイちゃんのところまで届くといいな」
……良い終わり方でした。
みなが幸せにしている毎日が伝わってきて、
これまで見てきた者にとっても、安心できるラストを締めくくってくれましたね。
あれ? まだなんか続くの!?
てかそのピンクの髪は灯里ちゃんでしょ! 髪伸びてないか!?
こ、これはもしや、さらにその後なのかぁーーー!
ヤバイ、数年後とかヤバイ。俺、ツボだからそれ。
あ、だれか降りてきた。
この声……ま、まさか!
「おはようございます、灯里さん」
……さん付け! アリアカンパニーに新人入社!
むしろ灯里のその後ろ姿、気になるよ~。
振り向いたーーーーー!
ちょっと大人びた灯里キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
ヤバイ、惚れそう。惚れた。
「とってもよく似合ってるよ、アイちゃん」
やはりアイちゃんかーーー!
てか、一期の初回で出てきただけのアイちゃん。
あの小さなアイちゃんがこんなに大きくなって…
あれから何年経ったのよ!?
モグモグと食事を摂るアイを、熱いまなざしで見つめる灯里。
「な、なんでしょう…?」
「ちょっと嬉しいだけだよ」
うっわ~、最初に見せたアリシアと灯里のシーンを
灯里とアイに入れ替えて見せるとは!
このシメ、良いです!
後輩が出来た嬉しさと、その存在の愛おしさ。
自分が先輩になってわかる、あのときのアリシアの気持ち。
それにしても、灯里が随分アリシアさんに似てきたと感じました。
一瞬で人を包み込むことのできるその優しい微笑みは
まぎれもなくアリシアさんを受け継いでいる。
なんだかもう素敵です!
このラストのシーンだけでも何度も見返してしまった。
全編振り返っても、とにかく素晴らしい作品。
久しぶりに天才の作品を見させてもらえたという感じです。
アニメーションも素晴らしかった。
制作サイドのこだわりとその技術に何度か痺れさせられました。
こちらこそありがとうと言いたい最後の1カット。
見ている間にときおり語られるセリフに感銘を受け、
見た後に優しくなれる作品。
そんな作品がほかにいくつあるだろうか。
これは素敵な物語。
アニメの最後では、思わず拍手を送っていた自分。
ありがとう、ARIA!
改めて言います。この作品に惚れました。
野暮なことかもしれないけれど、
正直、その後の灯里の物語も見てみたいですね。
いや~、良かった。今から第一期を見直すぜ!