実家に帰ったとき、自分の物はほとんどないので暇をもてあそぶ。
そんなとき、今は必要ではないけれど仕舞っておきたい思い出の品が
ひっそりとダンボール箱に詰めてある。
久しぶりに開けてみると、目に付いたのが「ゲームブック」。
幼少の頃(小中学生あたり?)にハマりにハマった一品です。
まだまだTVゲームは高価な部類であり、お小遣いを貯めて
やっと1本という時期。
そんな時期に自分をファンタジーの世界へと誘い、
ドキドキの冒険を体験させてくれたものが、この「ゲームブック」でした。
- 小説
有名なので知っている方も多いかと思いますが、一応かいつまんで説明をば。
簡単に言えば、ゲーム要素のある小説です。
東に進むなら40、西に行くなら122…といった感じで、
自分の進む道や行動を考えて、その番号へと飛んで読み進めていくのです。
RPGというよりもアドベンチャー要素が強いかもしれません。
ですが、このゲームブックの謳い文句には
「必要なのはサイコロ二個とエンピツ一本、消しゴム一個」という
ものがあり、冒険の前にはサイコロで自分のステータスを決め、
道中ではサイコロで戦闘を行なっていくというRPG的要素もあります。
今や「ドラゴンクエスト」を筆頭にRPGというジャンルのゲームは数多くあり、
戦闘の計算はすべてプログラムがやってくれます。
そこをあえてサイコロだけでアナログに行なうドキドキ感。
しかし今のTVゲームのように美麗な画面が出てくるわけでもなく、
文字で書かれた文章を頼りに、自分だけの世界を想像するという
楽しみがありました。
このゲームブックの代表かつ、その名を知らしめた作品が、
「S・ジャンクソン」と「I・リビングストン」著の
「火吹山の魔法使い」です。
これが「ゲームブック」の第一弾。
この頃の自分は、まだロールプレイングというものを知らず、
ファンタジー世界がとても新鮮に映っていました。
文章を読み進めて、自分の選択した番号へと飛んでいくだけの世界。
たまに挿絵があるのですが、そこに描かれた劇画調の描写に
恐怖さえおぼえました。
劇画調とはいえ、今のTVゲームとは違って立体的でもなく、
絵から取れる情報も少しだけ。
橋があって呼び鈴がある、という挿絵。
さて、これを鳴らしてみるかどうか……
選択に失敗したら元の番号に戻ってやり直せば良いだけですが、
そこはもうこの世界に入ってしまっているので、そんなことはしません。
選んだ道がそのときの冒険。
むしろそうした行為はタブーなのです。
第二弾の「バルサスの要塞」は、
学校でのクラス全体を巻き込むほどの大盛り上がりを見せました。
この要塞という閉鎖空間での冒険がまたたまりません。
溝の先に宝箱。そして縄が……
冒険者なら、宝箱と聞いただけで喉から手が出るほど。
選択肢は2~4択ほどですが、どうすれば手に入れられるのかを
悩むわけです。
選択を間違えればあっという間に命を絶たれる場合もあります。
長いテーブルがあるダイニングルーム。
こうした要塞では、こうしたごく普通の情景が逆に怖かったりします。
ここには元々富豪な人々が住んでいたのか、
なぜこんなにも大きなテーブルが必要だったのか。
そんな考えさえよぎります。
TVゲームでは立体的に映し出されるであろう光景も、
この1枚の絵柄だけの情報で、頭の中でそこをうろつき回るのです。
石像があって、近くに宝箱。
確かここで石像に襲われた記憶が……
細い廊下を歩いていると、前方からやってくる奇怪な物体。
円盤人という直球な名前のキャラクターも、この頃は恐ろしく感じました。
ここで運試しという行動も取れます。
サイコロを振って吉凶を決めるという行為。サイを振る手も震えます。
当時自分が買ったのはこの11冊。
1巻~11巻までキチンと揃えてありました。
その後も続刊がたくさんあったと思いますが、
どこかで区切りをつけたんだと思います。
第六弾の「死のワナの地下迷宮」の表紙。
これはすでにグロ画像ですね!(笑
けれどこの絵から、今回はどんな冒険が待っているのか
とてもドキドキした思い出があります。
何巻からか、別紙で「冒険記録紙」というのが付いてくるようになりました。
ここに自分のステータスなどを書いておき、
戦闘で減ったときは消しゴムで消して書き替えて…
という作業を繰り返すのです。
戦闘はさほど多くはないため、すぐにボロボロになるということは
ありませんが、勿体無いので別紙に目コピしていたのを覚えています。
第一弾の「火吹山の魔法使い」の初版が
1984年12月30日でした。
1985年5月25日の21刷のを買っています。
5ヶ月で21刷って、相当スゴイですよ!
よっぽど売れていたものなんだと、今さらながら痛感します。
このシリーズのほかに、
「スーパーアドベンチャーゲーム」という
これよりも分厚いシリーズがその後にリリースされました。
著者は同様の「スティーブ・ジャンクソン」。
自分は2巻と4巻を買い、友人が1巻と3巻を買ったことを覚えています。
この「スーパー」は、4巻続きモノで、
1巻で手に入れたアイテムを別の巻で使うといったギミックがある、
それはもう大冒険な作品でした。
単発でも遊べますが、アイテムを持っていたほうが有利なのです。
さらに魔法という要素も増えた作品でした。
この頃になると、各社が競って色々なゲームブックを出してきました。
たとえば「ドルアーガの塔」のゲームブック版など、
TVゲームが題材の作品も多々見られました。
ですが、やはり自分には、本物の冒険を錯覚させてくれる
この劇画調の絵柄に引き付けられて止まなかったのです。
ゲームをしつつも小説としても楽しめるため、
あまり本を読まなかった幼少の頃の自分にとっては、
文字を読むことへの抵抗力を和らげてくれたものでもありました。
自分はゲームが好きなので、
今のTVゲーム等を批判するわけではありませんが、
今や珍しくもない綺麗な画面、リアルな動き。
そこには想像をさせなくても
視覚だけで自分の置かれた状況が簡単に把握できます。
ですが、それでは想像力は養われないと感じます。
子供にとって文字というのは大いなる壁でもありますが、
想像力を向上させるためにも、たとえゲームであれ文字を読むという行為は
必要なんだと感じています。
まぁ、結局は楽なところを取ってしまうのは人のサガですから
仕方ないとは思いますが。
今でも発行されているかはわかりませんが、
お子様へこんなプレゼントもどうですか? (なんだこのオチは…笑