「ついこの間までは毎日一緒にいられたのに…」なんだか寂しそうなアリス。
プリマを目指していた頃は、灯里と藍華の3人で楽しく練習していたから、
独り立ちしてしまった今のアリスは、なんとなく寂しいんだろうなぁ。
もう数ヶ月は会っていない先輩2人。
思い切って電話をかけようとするものの、
「こんな夜遅くに直接会いたいなんて…。きっと迷惑だ。
だいたい理由がない…
きっかけが……なにもない」受話器をそっとおろしてしまう。
いやいや、いいんだよ!
きっかけとか気にする仲じゃないでしょ。
アリスちゃんから会いたいと言えば、2人なら喜んでくれるさ。
「会いたい」、それが理由になるんじゃないのか?
真面目さが邪魔をするのかなぁ。
翌日も仕事が入っているのか、忙しそうに出かけるアリス。
練習のときは一緒だったまぁ社長も、置いてけぼりでなんだか寂しそう。
「なんでもいい、何かないかな…」仕事中、懸命に2人に会うための理由を探す。
お客さんを乗せての案内とはいえ、プリマの仕事は単独。
客との交流はあるものの、どこか満たされない気持ち。
降りしきる雨の中、会社へと戻るその後ろ姿がとても寂しそうに映っていた。
「ただ会いたいだけなのに……なかなか難しいな」今日も夜遅くまでの仕事。
なりたかったプリマ。
仕事は楽しいけれど、ポッカリと心に空いた穴。
このままずっと会えなくなってしまうのかなと、後ろ向きな考えが止まらない。
しかしそこはアリス。ハッと思って自分を戒める。
ぺしぺしと頬を叩く。
叩く……のだけれど、やはり自分の心に嘘は付けない。
「さみしいよぉ…」しっかり者のアリスも、思わず本音がこぼれ落ちてしまった。
自分でも押さえ切れない本心。
その想いがこちらにも届いて、この言葉の重さに思わずグっときてしまった。
がんばれアリス。
その想いがあれば、きっといつか会えるさ。
いつ…か……
おまえらwwwバナナもりもり食ってんじゃねぇーよ!wあ、扉閉めたw
アリス「………」
そらそうだわ。
あれほど会いたかった2人が自分の部屋でバナナ食ってるんだからな。
「こんな時間に、何のご用ですか?」自分はためらってしまった夜の電話。
しかし2人はいとも自然に押しかけてきてくれた。
ピザ屋の新作を手土産に、みんなで食べようということらしい。
――きっかけを2人から作ってくれた。
「さぁ、暖かいうちに食べましょ~♪」灯里の優しい言葉。
アリスの気持ちに同調していたこっちからしてみれば、
その言葉にグっときてしまう。
3人のやりとりを嬉しそうに見るアテナ。
実はアテナが2人に話を持ちかけたんじゃないかと思ってみたり。
「会いたくても時間もきっかけもない……そう思っていたのに…」2人を前にして本音が口から出てしまうアリス。
「時間なんてね、こうして無理矢理作ればいいのよ」藍華の場合、強引さがあるからそれもできるけどね。
「でも……きっかけがないんです。
あたし最近ほんとに身動きとれなくて…。
このピザみたいに会うためのものがなくて…。
あたしには…何もなくて……」自分には何もない。
それでもなんとかきっかけを作ろうと考えていた。
今日は2人がきっかけを作ってくれたから会えたと思ったのだろう。
もし今後も会いたくなったらどうすればいいのか。
それを思うとまた寂しさが過ぎってきてしまう…
このアリスの寂しそうな振る舞いは、そういうことだろうか。
しかしそれを打破する灯里の一言。
「あるよ~。アリスちゃんがあるじゃない」ま~た、自然体でそんな恥ずかしいセリフを言ってのけやがって!
だが今回ばかりは灯里の言葉に素直にうなずけてしまった。
「会うためのきっかけも、特別な理由もいらない。
アリスちゃんだけで十分だよ」その身1つで会える。
そうだよ、誰か1人の会いたいという気持ちだけで集まれる仲なんだよ。
しっかりと繋がっている3人なんだよ!
最後でようやく、アリスが心の底から微笑んだ。
そう思えた瞬間でした。
くぅ~、こんな素敵な話をまたまた見せてくれやがって!
じ~んときたじゃないか!
この勢いだと単行本全巻買いもマジでありえるな…